まめ蔵の小さなアルバム。モノクロ写真は開店当時の看板です。(写真をクリックすると拡大写真が見られます。)

「まめ蔵」は1978年10月にオープンしました。今年で27周年を迎えたことになります。僕が28歳の時でしたから、もう人生の半分をまめ蔵とともに過ごしてきたことになります。
当初は「カレーと珈琲の店」としてスタートしました。「雰囲気のいい喫茶店でうまいカレーを出したら、いけるかも」という簡単な発想から始まったのです。いまでは吉祥寺のカレー屋さんとしてかなり有名な店になってしまいました。不思議だなあ、という気持ちが正直なところですが、僕にとって、まめ蔵はあらゆる意味で原点になる店です。

ここで出会った人たちとは本当にいろいろなことをともに経験してきました。 いちいち挙げればキリがありませんが、開店間もない頃から常連客として毎日毎日、そしてまた毎日毎日やってきては、長時間ねばって騒いでいた明星学園高等部の生徒と、何人かの他の濃〜い常連たちとの交友はまったく面白いものでした。美術と音楽が大好きだった彼らと、まめ蔵のアルバイトの子たちとで「楽展的!」というグループをつくり、吉祥寺の駱駝館画廊で7年間もグループ展を続けたことは、今となっては懐かしい思い出です。まめ蔵での古楽の演奏会や、そう「ツキスミ音楽団」なんていう素敵な楽団もここから始まりました。また、何人かの仲間とはよく一緒に山登りに行ったりもしたものです。密かに数人とはじめた「長編小説を読む会」で読んだ、セルバンテスの『ドン・キホーテ』やドストエフスキーの『カラマゾフの兄弟』、フローベールの『ボヴァリー夫人』、アレクサンドル・デュマの『三銃士』など、内容はあまり覚えてませんが、長いものを読む喜びをたっぷりとあじ合わせてもらいました。『風の谷のナウシカ』を何人かで見に行き、興奮して明け方までデニーズでお喋りしていたなんてこともありました。

昔のまめ蔵で忘れてはならないのが、サッカー部があったことでしょう。中学、高校とバリバリのサッカー選手だった僕のまわりには自然とサッカー好きも集まっていて、生来のやりたがり根性から「まめ蔵蹴球団」を結成、井の頭公園での早朝練習からはじまり、日本サッカー協会公認の東京社会人リーグにまで加盟というエスカレートぶりでした。社会人リーグといっても最下層の4部で、メンバーさえ揃えば簡単に加盟できるのです。まあ、戦績はカズもヒデもいないチームですから最下層4部のさらに最下層周辺を行ったり来たりしていたのではないでしょうか。
実はそれから20年ほどたった今年、「まめ蔵蹴球団」は復活しました。いまのスタッフや若い友人にもサッカー好きが多く、フットサルのチームをつくり、ときどき練習、試合と楽しんでいます。この夏のことです。絵本作家の荒井良二さんたちの大会に参加したのですが、よせばいいのに僕も試合に出ました。若かりし頃には国立競技場で試合をしたこともあるまあまあの選手だったのに、この日の「ドタバタ心臓バクバク事件」は本当にショックでしたね。荒井良二選手はかっこよく点なんか入れたりして、若い女の子のファンの黄色い声援に満面の笑みで応えてるのに、僕の心臓はいまにも爆発しそうに悲鳴をあげているのですよ。ああ、もう思い出したくありません。

僕が絵を描き始めたのもまめ蔵に集うスタッフや常連とのつきあいから始まったことですし、妻の舞踊家・山田せつ子の公演の裏方や音楽の仕事なんかもワイワイガヤガヤと一緒にやってもらったものです。誇張でもなく、それは僕たちの青春そのものでした。
時は流れ流れて、若かった彼らももう熟年?と言われる歳になってしまい、「まめ蔵」に来ることはほとんどなくなりました。27年という月日がたしかに過ぎたんですからね。僕の頭だって真っ白です。

最近は「吉祥寺カレー屋・まめ蔵」と名乗って、日々たくさんのお客さまに足を運んでもらっていますが、カレーの味や作り方は昔とまったく変わっていません。店内の内装もどこか素人っぽい雰囲気もそのままです。壁面には僕の大好きな絵本作家たちの原画が飾ってあります。長新太、スズキコージ、木葉井悦子、片山健、荒井良二、飯野和好、たむらしげるさんたちの絵です。そこに混じってマスターの絵やスタッフの絵も堂々と飾ってあります。最近のアルバイトの子たちは昔とはもちろん違いますが、みな個性派ぞろいで可愛いですよ。でも、ちょっと繊細過ぎるかな?と自己中の団塊おじさんは思うこともありやなしやの、この頃であります。

僕はといえば、1990年にオープンした「諸国空想料理店KuuKuu」の仕事や絵の仕事が忙しくなり、まめ蔵にはあまり出られなくなってしまいましたが、2003年末にはKuuKuuも閉店、絵やテラコッタの制作もマイペースでできるようになってきたので、最近では昔のようにまめ蔵の厨房に立ってカレーを仕込んだりもしています。白髪あたまのおっさんが厨房に立っていたら、それが南椌椌というマスターです。トシなのに頑張ってるなあと、お思いの方、ひとこと励ましの言葉でもかけてあげてください。

このホームページは「まめ蔵」のホームページというわけではありませんので。メニューの一部と店内の雰囲気を伝えられる画像を載せるにとどめました。吉祥寺にいらした折にはぜひ寄ってみてくださいませ。お値段は単品で800円から、まずまずリーズナブルだと思います。

住所 180-0004武蔵野市吉祥寺本町2−18−15
Tel&Fax 0422−21−7901
営業時間 am11:00〜pm10:00
(土日祝はpm4:00〜5:30まで仕込み休みがあります)
年末年始以外はほぼ無休でやってます。

 
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